グリーンセイバー 深串泰光さん
熱帯雨林の珍しい植物との関係を解き明かし、身近な植物から世界を感じさせてくれる「クッシーさん」は、南極以外はほとんど行ったという、旅するグリーンセイバー。子どもたちを笑顔にする達人でもあります。
知ることよりも感じること。
そして何より楽しむことが大切。
屋久島での感動が
学びへの意欲に。
若い頃から山登りをしていましたが、ピークハンター(山頂を踏むことが目的)で植物には興味がありませんでした。ただ、19歳の時に屋久島の宮之浦岳に登って、原生林の中ですごく感動した経験があって、10年ぐらい前にカリフォルニアのレッドウッド国立公園で世界一高い木を見た時に、そのことを思い出したんです。それで巨木について勉強したくなって、たまたま知った森林インストラクターを受験しました。グリーンセイバーを受験したのは、森林インストラクターの先輩にもっと幅広く勉強できるよと勧められたから。マスターになった頃に事務局から声がかかり、子ワクに参加するようになりました。インストラクションは、森林インストラクターの仲間で主催した自然観察会がデビュー。当時は観察会が少なくて、たいてい先輩が担当して自分たちはサポートしかさせてもらえなかったので、無謀にも同期の仲間だけで企画しました。
やる気があれば
知識はついてくる。
初めての時は、台本をきっちり作ってほぼ丸暗記です。何か質問されても答えられないと思って、一方的にしゃべり続けました。それでもみんな真剣に聞いてくれたのが嬉しかったですね。続けるうちに、お客さんと対話しながら楽しくできるようになりましたが、引き出しを増やすという意味で役に立ったのは、ベイシック、アドバンスの勉強です。暗記系なのでちょっとたいへんですけど、勉強したかいがありました。でも、大切なのは知識じゃないと思うんです。要はやる気。あんなふうにできたらいいな、でも自分には無理という人が多いと思うけど、やってみたいという気持ちがあれば、知識は後からいくらでもついてきます。
やってみるとわかるけど、インストラクションする立場の方が絶対楽しいですよ。特に子どもは素直だから反応もストレートだし、どうすれば楽しんでくれるか、興味をもってくれるかと考えるのは、すごく楽しいですね。子どもと接する時に心がけているのは、当然ですが、まずは安全。そのうえで、さわったり、匂いをかいだり、五感を使って楽しんでもらうこと。自然にはいやな匂いもあれば虫にかまれたりすることもあるけれど、最後にあぁ面白かった、また遊びたいなと思ってもらえるように心がけています。
身近なものから
世界を感じてみよう。
やっぱりセンス・オブ・ワンダー※、知ることよりも感じることが大切だと思うんですよ。自然が楽しいと感じて、好奇心がわいたら、その先は自分で勉強しますから。何を見ても最初に名前を聞く人がいるんだけど、すぐに忘れてまた聞くんですよ。でも、匂いをかいで、さわって、こんな形でこんな匂いがしたと自分のことばで表現して、それから最後に名前を聞くと覚えますね。それが感じるということじゃないかな。仕事との両立はたいへんですが、楽しいから続けられますね。毎週末、何らかの予定を入れていますが、逆に活動することがリフレッシュになっている感じ。リタイアしてからでは遅いと思いますよ。今50代ですけど、もっと早くからこういう活動をしていればよかったと思うくらいですから。
仕事は旅行関係です。もともと旅が好きで、大学卒業してから3年ぐらい放浪して、南極以外はほとんど行きました。熱帯雨林が好きで、最近はボルネオにはまってるんですが、日本でインストラクションするときも、同じ仲間でこんなのがあるんだよと、旅先で見た植物の話をよくします。身近な植物から世界の植物を感じてみようというのは、ぼくのコンセプトのひとつですね。身近なものから世界を感じること、知ることよりも感じること、そして何をするにしても楽しむこと。この3つをコンセプトに、これからもやっていきたいと思っているので、興味のある人はぜひ参加してほしいですね。
※「センス・オブ・ワンダー」は、レイチェル・カーソンの同名のエッセイの中で語られる、
神秘さや不思議さに目をみはる感性のこと。
(2013年9月発行 聚レター126号より)