グリーンセイバー 塚本秀貴さん
2009年4月の立上げ時から「嵐山ふれあいの森」※1のリーダーを務め、本業の仕事の関係で2015年8月より赴任している福岡でも新たな活動を模索中の塚本秀貴さんにお話を伺いました。 先祖伝来の森づくりの技術を
時代に合った形で継承したい。 プロの林業家に技術を学ぶ。 子供の頃から自然大好き人間で、プロのマウンテンクライマーかトレッカーを夢見て、20代はヒマラヤ山系とか南米パタゴニアとか、世界57カ国ぐらいの山やトレッキングコースを攻めていました。ある時、ロイヤルネパール航空の飛行機の窓から、荒廃して赤い土がむき出しになっている山肌が見えたんですね。ショックで自分にも山を守るための何かできないかと思ったのが、森づくりの勉強を始めたきっかけです。
本業は研究開発部門でのゼネラルエンジニアでかなり忙しかったんですが、金曜日、会社が終わるとそのまま車に山仕事の道具を積んで、信州大学の島崎先生や農林水産大臣賞を受賞されたプロの林業家の元へ通い、スギ・ヒノキ人工林の施業技術をみっちり学びました。
所沢下富雑木林※2では、学術的にも実務的にも権威者である大森孟先生に師事し、地主さんからの依頼で先祖伝来の手法で雑木林を復元する活動を実施。25年ぐらい前で、その頃、雑木林にどんな風に手を入れたらどうなるか検証した人が誰もいなかったんです。そこは現在、観光客も含めた多くの視察者が訪れる見事な雑木林帯になっており、そういった経験が今の自分の基礎になっている気がします。
平日も仕事を終えて23時頃帰宅してから朝方まで自然系の勉強。オールラウンドな知識と経験がなければだめだと思い、片っぱしからアウトドア系、自然科学系、環境系の資格を取ったのもこの頃で、グリーンセイバーも第1回検定を受験しました。今思えばかなり無茶な生活を送ってきましが、ものすごく勉強になりましたし、やっておいてよかったですね。余裕ができたらやろうと思ってると、いつまでたってもできないですから。
プロの技術と素人を繋ぐ。
森づくりのプロにならないかという話もあったんですが、好きなことを仕事にすると行き詰った時に逃げ道がないかなと思い、趣味の領域に留めています。それにこれからの時代、アマチュアのボランティアが関わっていかなければ森づくりはできない。けれど教わった技術はアマチュアに伝えるには難しすぎる。だから、アマチュアにも安全重視で実践できるようにアレンジして、プロの技術とボランティアの技術を繋ぐのが自分の役目ではないかと思ったんですね。
そうこうするうちに、全国各地のボランティア団体から口コミで、山仕事をやりたいので指導にきてくれという声がかかったり、山主さんから山の面倒をみてくれないかと依頼されたりするようになって、今は埼玉、長野、山梨、茨城などで、地方のボランティア団体と計120haぐらいの山の面倒を見ています。
福岡で一緒に活動しませんか。
二宮フィールドの川端さんが所沢下富のフィールドに参加されたことがあり、塚本っていうのはこういうことができるんだと思われたんでしょうね。嵐山フィールドを立ち上げる時にリーダーを頼まれて、今年で7年目に入りました。
嵐山フィールドエリアは約8.1ha。今はスタッフメンバーが少ないので下刈りだけで精いっぱいですが、ゾーンごとにテーマを設定して、最終的にどういう森にしたいかという計画に沿って作業をしています。森の中で汗をかくのは気持ちいいね、では発展性がないというか、飽きちゃうんですよ。常にステップアップしていくような場が与えられないと。森づくりのビジョンを明確に打ち出すことが大事で、将来的には比企丘陵の雑木林模範林になればいいなと思っています。
埼玉では他に、東洋大学の川越校舎の雑木林の復元を地元の人と一緒にやったり、家族連れを森の中に呼び込むためにツリーイングという木登りイベントを国営武蔵森林公園などで実施したり、FLC※3の技術アドバイザーとして、森林ボランティアの団体向けに安全な森づくり施業の指導や資格制度の普及活動もやっているため、8月末まで週末の予定がほとんど埋まっているのがストレスかなとは思っています。
実は、8月末に仕事の関係で福岡に転勤することになりました。せっかくここまでやってきたので嵐山フィールドを離れるのは非常に残念なんですが、他のメンバーが、できれば地元の人も巻き込む形で引き継いでくれたらと思っています。
福岡でも何か活動したいと思っていて、すでに自社工場の緑地管理は塚本がやるんだろうといわれたり、ツリーイングのイベントが決まりつつあります。福岡やその周辺で何か森づくり系の活動をやっている方、やりたいと思っている方は、声を掛けていただけると有難いです。
※1:立ち上げ当時のフィールド名称は「損保ジャパン首都圏ふれあいの森」
※2:埼玉県入間郡から所沢市にかけて広がる三富新田の一つのエリア
※3:森づくり安全技術・技能習得制度全国推進協議会
(2015年6月発行、聚レター133号より)