グリーンセイバー 高橋まり子さん
仕事と家事・育児を両立しながら、グリーンセイバーが自主的に企画・運営するGS企画チームのメンバーとして、観察会や自然体験プログラムのリーダーやスタッフを務める高橋まり子さんに、お話をうかがいました。
すぐに結果は出ないから、
人も自然もマイペースで。
失職をきっかけに
奥多摩のボランティアに。
小さな幼稚園に勤めていたときに、植物に関するプログラムを担当させてもらったんですね。庭で花を育てたり、畑を借りて家庭菜園をやったりしていたので、できるだろうと思われたようなんですが、すごく自然のことに詳しいとか、そういうことはなかったんです。在職中に自然保護協会の自然観察指導員の資格も取りましたが、特に活動はしていませんでした。その幼稚園がいろんな事情で閉園することになって、思い切って何か始めてみようと奥多摩のビジターセンターのボランティアに登録したのが、こういう活動の最初です。
奥多摩に行き始めた頃は子どもがそれほど大きくなかったので、無理せずに月3回のところを1回か2回行ければいいというくらいだったんですが、子どもに手がかからなくなってくると少し意欲が出てきて、2005年に森林インストラクターをとりました。先輩からいろいろ刺激を受ける中で、グリーンセイバーのことを知り、テキストを購入。知りたいと思っていたことが書かれていたので、これはいいと思ってベイシックとアドバンスをとりました。
小さな出会いを重ねて
少しずつ、一歩ずつ。
話は少し戻りますが、仕事と子育てをしながら自然観察指導員の資格をとった頃に、ある企画でアフリカの緑化活動をしているNPOの方と、植物の専門家と、なぜか私が対談をすることに。NPOの方の、アリの眼とワシの眼、グローバルな目線と足元の目線と両方でこういう活動をしていて、日本にいる時期は少ないけれど日本のことも気にかかっているという話や、植物の専門家の方の、近頃のガーデニングは植物を生き物として見ていないので気になるという発言が印象に残ったんです。その頃の私は、タネや球根を取り寄せて、楽しくきれいに植えることでけっこう満足してたんですが、そういう見方もあるんだなと。
私はマイペースで、何かに急激にのめりこむようなことはないんですが、そういった出会いや考え方に少しずつ影響されて、今はまだ動けないから、まずは自分がいいと思う活動をしている団体の会員になって寄付をしようとか、子どもが手を離れたので自分でも何かやってみようとか、小さなきっかけやつながりをいただいて、ひとつひとつやっているうちに今になったという感じです。
自然との関わりが
視野を広げてくれる。
10年ほど前から、男子中高生の寮の職員をやっています。先生や養護教諭は資格をもったスペシャリストですが、寮母というのは資格ではなくお母さんの延長のような感じで、何かあったときにサポートするような仕事です。自分の子育てはもう終わったんですが、こうすればよかったなと思ったり、学ぶことも多いですね。
そんな中で思うのは、何か問題がおこったとき、人だけを見て解決しようとすると苦しくなるんじゃないかということ。もう少し視野を広げて、自然の中で考えてみると、少しラクになったり、解決できることもあるんじゃない?と思ったりします。
中1だと小学生の延長で、虫をつかまえて見せてくれたりするんですが、中2ぐらいになると、虫取りなんて子どもっぽいってガラっと変わっちゃうんです。でも、皆さんもそうだと思いますが、小さいときにベースがあれば、好きな子はまた戻ってくると思うんですよね。だから少しでも興味をもってくれたらなと、掲示板にさりげなく聚のお知らせを貼ったり、「虫が好きなあやしいおばさん」をやったりしています。
いずれは、ひとつの地域を手入れしながら継続的に調査していくようなことがやりたいんですが、今はまだその余裕がなくて…。子育て中の人もそうだと思いますが、仕事をしてると本当に時間がなくて、視野が広がっていかないんです。だから動けるときだけ観察会やイベントに参加できて、刺激を受けられるこの活動は、私にとって本当に貴重だなと思っています。 (2015年9月発行、聚レター134号より)